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新信託法の活用 その1 自分がボケてしまう前に

※以下の記事はJIMOTに掲載した記事に加筆・修正したものです。

 大正11年に制定された「信託法」はその後数次に亙って小規模な改正を重ねてきたものの時代の流れについていけず、平成17年より全面改定に向け作業が始まり、平成18年12月8日に臨時国会で可決承認され同15日に公布されました。

 

 大改正された信託法(以下「新信託法」)、具体的にどのような活用法があるのか述べてみたいと思います。

1. 自分の財産を管理・保全するために(+「任意後見契約」)

 例:マンション経営者 Aさん(74)の場合。

 東京都台東区在住のAさんは、浅草駅にほど近い好立地にマンションを所有し、賃貸家賃と一階部分のテナント料収入(コンビニと喫茶店)で十分に生計を立てています。しかし、寄る年波には勝てず、肉体の衰えを自覚すると共に記憶力についても不安を覚えています。

 妻は既に他界しており、息子たちは独立していますが、兄弟仲が悪くとても自分の財産管理を任せられません。このまま精神的にも肉体的にも衰えきってしまったとき、どうすべきか不安に思っています。

 上記のような場合、認知症になって完全に判断能力(事理弁識能力)を失う前に、財産管理のために適切な対策を講じておく必要があります。その手段の一つが信託制度の活用です。

 ここで、信託制度について簡単に説明しましょう。

 「信託」とは、他者の為に財産を預かり、管理・運用・処分する制度です。

 「信託制度」は、「委託者」(財産をもってる人)が自分で財産を管理せず、契約または遺言でこれを他者(「受託者」と言う)に委ね、自己に代わってこれを管理・運用・処分させる制度です。「受託者」(信託銀行、信託会社等)によって「信託財産」(預けられた財産)が運用・処分されることで益を得る人間を「受益者」と言います。「受託者」は「受益者」の為だけに「信託財産」を管理し、適正にこれを運用し、あるいは処分を行います。

 この「信託財産」に関する権利・義務は原則として「受託者」に委譲されており、「委託者」の債権者や相続人と言えども勝手に手を出すことはできません。

 上記の「信託制度」の性質を理解したところで、これをAさんに当て嵌めてみましょう。

 Aさんは、頼みにならない息子たちに代わって、信託会社(受託者)と信託契約を結び、自己所有のマンションを信託財産、受益者をAさん自身に設定します。

 信託の目的は、Aさんが認知症となり判断能力を喪失(もしくは著しく低下)した後に信託財産を管理・運用し、Aさんの生活費及び身上介護費等に必要な資金を定期定額(毎月○○万円)に交付させ、また急な入院等突発的な出費に対しては、随時交付させることとします。

 そのため、Aさんがボケてしまう前は自分の指図どおりに財産を管理・処分できます。認知症が発症した後は、信託会社がAさん(委託者であると同時に受益者)の為に信託財産を管理・運用・処分します。息子たちや悪徳不動産業者が手を出すことはできません。

 Aさんは、財産管理を信託会社に委ねる一方、徐々にボケが進んでしまったときの用心として、生活面の見守り、身上介護の為の諸契約の締結、交付される資金の管理などを目的とする「任意後見契約」を信託契約と同時に結びました。その際、任意後見契約の受任者を、同時に「信託財産指図人」に指定しました。信託財産指図人(以下、指図人)は、判断能力の衰退したAさんになり替わり、Aさんの必要に応じて信託財産を交付するよう、信託会社に指図できます。一方、信託会社の方は、信託契約の受託者として信託財産の管理につき「善管注意義務」を有します。したがって指図人の指示と言えどもそれが妥当なものかチェックした上で、信託財産の交付・処分等を行います。そのため、指図人が信託財産を横領することを掣肘することができます。

 このように信託契約と任意後見契約をミックスすることで、より安全かつ委託者の希望に沿った身上監護等を得ることが可能になります。

次回は 知的障害を持つ子どもの「親なき後」問題について考察します

以上がJIMOTからの転載です。

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