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新信託法の活用 その2 「親なき後」問題

※以下の記事はJIMOTに掲載したものです。

知的障害、または精神障害のある子供を持つ親にとって、最大の悩みは「自分が死んだあと、子供は生活していけるのか?」と言うことです。

 自立困難なわが子に、自分の死後相続財産が渡っても、財産管理ができないのではせっかくの相続財産も散逸してしまいます。そのような不幸な事態を防ぐ方法として、信託の利用が考えられます。以下、2つのケースで検討してみます。

ケース1 Bさん(70)の場合 遺言信託の活用

 Bさんの家族構成は妻(63)と長男(40)と二男(33)。二男は独立しており、妻子がいます。

 Bさんの長男は知的障害があり自立は困難です。Bさん自身は齢70にしてまだ矍鑠としていますが、古希を迎えてさすがに先々のことが心配になってきました。中でも最大の問題は長男のことです。もし自分が死んだあと、長男に相続財産が渡っても、到底管理できません。悪徳商法の被害にあって、財産を騙し取られてしまうかもしれません。

 そこで、Bさんは自分の死後長男の生活費がきちんと支給されるように、遺言契約で信託を設定します。事業で付き合いのある行政書士と取引先の銀行の信託部門に相談して、公正証書遺言を作成し、同時に銀行と信託契約を結びます。銀行が受託者、長男が受益者で、行政書士は遺言執行者に指定されます。信託指図人はBの妻とし、Bの死後は妻が長男の為に必要な信託財産の交付を銀行に指図する。もしBの妻が死んだ後は二男が指図人となり、長男の死後は二男に信託財産の残余部分を帰属させると言う内容です。

 このように信託契約を結ぶことで、財産は受託者(この場合は銀行)によって管理され、身近な親族である妻や二男が長男の必要に沿って財産を活用してくれます。もし、妻や二男が勝手に財産処分を行おうとしても、銀行が「信託契約の受託者に課せられる善管注意義務」に従ってチェックを入れますので、無茶なまねはできません。こうして、長期に渡る長男の介護を行うための経済基盤が確立されます。Bさんもひとまず安心と言ったところです。

ケース2 Cさん(76)の場合 「特別障害者扶養信託」の活用

 Cさんの長女(38)は障害者です。Cさんは自分の死後、残された長女の行末が心配です。そこで、長女の生活費を確保するため、財産の一部を信託することにしました。しかし、Cさんが生前に長女を受益者とする信託契約を結んだ場合、「贈与税」が課せられます。課税は贈与額が1000万円を超える部分につき50パーセントもかかります!これではたまりません。

 そこで、Cさんは「特別障害者扶養信託」と言う制度を利用することにしました。この制度を用いれば、信託受益権のうち6000万円までは贈与税がかかりません。

 「特別障害者扶養信託」とは、特別障害者の父母等の死後、残された特別障害者の生活の安寧を保つことを信託目的とし、親族や篤志家が受託者(信託銀行など)に金銭や不動産を信託し、「特別障害者扶養信託契約」を結ぶことで成立する信託制度です。

 通常、委託者と受益者が異なる「他益信託」を設定した場合、受益者に贈与税が課せられるのが原則ですが、「特別障害者扶養信託」においては、「障害者非課税信託申告書」を提出することで信託受益権のうち6000万円までは贈与税が非課税となるのです。

 さらに、通常の年間基礎控除額110万円分を加えれば、最大6110万円まで非課税となります。そのうえ、「相続税清算課税制度」を活用すれば、より多くの財産を残してあげられるほか、贈与税額の圧縮も期待できます。

 このように信託制度を上手に活用することで、「親なき後」も残された障害のある子供の生活を、金銭面で支えることができます。

次回は、「後継ぎ遺贈型」受益者連続型信託について考察します

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