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TPP成立(成功)の前提は、各締結国の完全雇用の実現。…それって最初から「無理!」ってことでは?

 二期目を迎えたオバマ・アメリカ大統領は、国内財政問題等について本腰を入れて対応する覚悟のようだ。特に、雇用問題は重要な課題である。そんなオバマ大統領にとって、日本のTPP参加は「有難迷惑」かもしれない。日本がTPPに参加した場合、日本の医療サービス分野への参入や農産物の輸出等で有利になる半面、日本製の自動車等が関税撤廃により現在よりもアメリカ国内市場に入り易くなり、結果的に自動車関連産業(非常に裾野が広い)で失業者が増える危険がある。実際、アメリカ自動車通商政策評議会(ビッグ3の業界団体)は日本の参加に反対してる。
 国際貿易の中で、自国の産業育成や雇用を守る防御壁になるのが関税である。江戸時代末期、不平等条約で関税自主権(と在留外国人への裁判権)を失った日本が、明治時代にどれほど苦労してそれを取り戻したか、忘れてはならない。TPPに参加した場合、交渉如何によっては、全ての関税が原則撤廃となるかもしれない。自由貿易の拡大を図るなら、目指す先は当然、関税撤廃だからだ。(安倍総理の考えは、『例外なき関税撤廃には反対』と言うもの。オバマ大統領も、本音は同じだろう)
 TPPに日本が参加すれば、他のTPP参加国、例えば米国や豪州等から安くて品質も良い製品やサービスが入ってくる。同じ分野で競合する日本の企業や生産者は、価格面で苦戦を強いられる。競争に負ければ、廃業も避けられない。当然、かなりの人数の失業者が出る。逆に、米国や他の参加国も、日本製品が今より安くどんどん市場に入ってこられたら、自国の産業界は大きな打撃を受けるだろう。当然、それらの産業に従事する人々の雇用を圧迫せずにはいられない。これでは、お互いに首を絞め合うような関係になってしまう。当然、職を失った人々は、商売敵の輸出国を恨んだり、TPPを締結した自国の政府を恨むだろう。深刻な政情不安や、締結国間の軋轢を生む懸念もある。それを避けるためには、競争に負けた分野で失業した人々が、すぐに別の仕事に就ける機会が確保されていなければならない。つまり、各条約締結国が国内で完全雇用を確立していることが、TPPが上手く行くためのカギなのである。「なにをバカな!そんな非現実的な話があるか?!」と言われるかもしれないが、日本の内閣府が発表したTPPに関する試算は、国内完全雇用を前提に試算されているのである。その試算結果は、「TPPに参加すればGDPが10年間で2兆7000億円増加する」というもの。年間では2700億円、イージス搭載ミサイル護衛艦2隻分にしかならない(海上保安庁の予算より、1000億円以上多い)。個人の金銭感覚では途方もない金額だが、日本の国家財政の規模を考えれば大した額では無い。しかも、現在失業率4%以上で完全雇用未達である。前提条件がおかしいのでは、GDP増加も試算通りにはいくまい。
 そもそも、アメリカがTPPに係りだしたのは、グローバリズムの進展に役立つと考えたからであり、アメリカがかくもグローバリズムに固執してきたのは、国是であった「アメリカ一極主義」に合致すると考えられたからだ。しかし、冷戦からソ連が抜け落ちていよいよ「アメリカ一極」が実現するかと思えたものの、実際はその推進にものすごいコスト(特に軍事費)がかかることにアメリカのエスタブリッシュメント達もいい加減気付いてきた。今後、アメリカではこれまでのように無邪気に「自由貿易万歳!」とは言ってられなくなった。TPPに対するスタンスも、微妙に変化していく可能性がある。安倍総理が訪米の手土産に「TPP交渉参加」を考えているなら、本当に相手が喜ぶお土産か、よく考えたほうがよさそうだ。でないと、とんだ勘違いをやらかすことになる。(高市早苗政調会長は、現段階でほ、訪米時の総理のTPP「参加表明」は無いとの見解。そのほうが、賢明と思う)
 
 

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