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排水量とトン数の話

 船の大きさを表す指標として、軍艦では「排水量」、商船等では「トン数」が用いられる。両者の違いについて、雑誌『Securitarian』(防衛弘済会)の記事から引用する。

以下引用

排水量(displacement) 
 軍艦の大きさ(重さ)を表す方法で、軍艦をそのまま秤に載せて計った場合の重さに相当する。排水量とはその字が示すように、船を水に浮かべたときに、水中に沈んだ部分(喫水線以下の船体部分)が排除した水の体積を意味する。アルキメデスの原理により、この数字を水の比重で換算した値(そのため、海水では真水よりも若干大きくなる)がその物体の重さになる。海上自衛隊や旧海軍、世界各国海軍の艦艇の大きさ(重さ)は排水量で表すのが共通の慣例となっている。

総トン数(gross tonnage:GT)
  客船や貨物船の大きさを表す数字で、船の構造上閉鎖できるすべての空間の容積(V)から、V×0.2+0.02+log(V)という計算式で求める。つまり、その船の閉鎖可能な空間がどれだけあるかという値で、船そのものの重さを表すものではないが、登録税、関税、入渠時の手数料などの基となる。非常に粗い目安でいうと、総トン数の40%程度の数字がその船の排水量、つまり実際の重さになる(5万総トンの客船なら、実際の重さ=排水量は約2万トン)。100立方フィート(2.833立方メートル)がおよそ1トンになる (中略) 海上保安庁の巡視船艇は、船の構造が軍艦様式よりも商船様式に近いせいか、大きさを総トン数で表している。従って、6000トンの巡視船の排水量は2400トン程度である。

載貨重量(dead weight:DW)と純トン数(net tonnage:NT)
 載貨重量とは各種ある喫水線のうち、夏季満載喫水線状態の排水量と軽貨状態排水量との差であるが、要するに積める貨物の重さで、タンカーや小麦、石炭などのバラ積み船の貨物を搭載できる量を示す。純トン数は貨物搭載場所の容積、乗客の数から得られる必要空間などの数字を基に計算される値で、同じ船でも総トン数より小さい値となる。その船が上げる収益に対する課税や手数料計算の基になる。このほか、パナマ運河、スエズ運河を通過するときの課金計算の基になる運河トン数(cannal tonnage)などもある。」 以上、引用終わり。
(出典:『Securitarian』2006年7月号(532号)45頁、解説:江畑謙介 ※註、太字下線は高橋による)

ついで、基準排水量その他のついて
以下、また引用
基準排水量(standard displacement)
 海上自衛隊艦艇の大きさを表す公表数値として使われているが、基準といいながら排水量の計算で最も国際的なバラツキがあるのがこの基準排水量の計算方式である。 元は1922年に締結された史上初の国際軍縮条約であるワシントン(海軍)軍縮条約の交渉に当たって、それまで各国の軍艦の大きさを表す方法がまちまちなため、条約締結国の軍艦(ワシントン条約では戦艦と航空母艦)保有量をトン数で決める事ができ難かったことから、条約をまとめる目的で新たに設定された排水量計算式であった。燃料、真水、弾薬、食料など、所定の搭載品を最大限搭載した満載排水量から、燃料と真水を除外した状態の重さを英トン(2240ポンド=1016㎏)で表した数値だが、これでは船は動けないので、実際上の意味は無い。
 海上自衛隊の基準排水量とは、このワシントン条約の基準排水量からさらに弾薬や食料、乗員の重さを引いたもので、既定の搭載装備(※高橋註;この搭載装備を規定しているのが、昭和53年2月18日に制定された「水上艦船搭載物件配分標準」という海自の内規と思われる。詳細は不明)は持つが、消耗品や乗員は含まない重量(メートル・トン=1000㎏)を示し、「建造排水量」の概念に相当する。純粋な船としての重さを意味するが、行動(作戦)可能状態を意味するものではない。水に浮いている実際の状態では、これよりずっと大きな数値で、7250トンのイージス護衛艦(※高橋註;こんごう型DDG)なら1万トン前後になる。

満載排水量(full load displacement)
全ての装備を持ち、燃料、水、食料などの消耗品を計画最大値まで搭載し、人間が乗った状態の値で、その船のほぼ完全な状態と能力を示す。現在、世界の海軍の多くは満載排水量を、艦艇の重さを表示する基準値としている。

常備排水量(normal displacement)
 全ての装備を持ち、燃料は計画最大値の4分の1、弾薬は4分の3、真水は2分の1を搭載している値で、軍艦が戦闘を開始する状態に相当するとして、ワシントン軍縮条約まではこの値が設計の基本とされる場合が多かったが、非現実的な想定であるとして使われなくなった。

公試排水量(trial displacement)
 全ての装備を持ち、弾薬は最大量を、燃料、真水、食料の3分の2を搭載した状態で、旧海軍では設計の基本とした。海上自衛隊の艦艇もこの状態を常備状態として設計の基本とする。

軽貨排水量(light displacement)
 全ての装備を持ち、乗員は乗り組んでいるが、弾薬を含む消耗品を積んでない状態。

 このほかに、戦闘(状態)排水量、潜水艦の浮上(状態)排水量、」潜航排水量などがある。」以上、引用終わり。
(出典:「『Securitarian』2006年8月号(533号)、解説;江畑謙介、※註;文中の下線太字は高橋による)

※英トン=2240ポンド=1016㎏
 米トン=2000ポンド=907㎏
 メートル・トン=1000㎏

 基準排水量とは、ワシントン軍縮会議(1922年)に際し、各国ごとバラバラだった排水量の計算を統一する「基準」(standard)として作られたものでした。
 軍縮会議とは、通常敵対国同士で行うものです(米ソ交渉)。同盟国同士なら、「軍縮」より互いに「もっと国防に努力を」求める(軍事力増大)ものです。この会議に集まった主要国は、英、米、日、仏、伊と、第1次大戦では同じ陣営で戦った戦友同士でした。それが、第1次大戦終結からわずか数年で「軍縮会議」を開くと言う事は、この段階で既に新たな対立構造ができつつあったということです。また、ワシントン及びロンドン会議によって「海軍休日」(建艦休止)となることが世界恐慌の引鉄ともなりました(造船業は裾野が広い!)。やがてそれは第2次大戦へと続きます。軍縮会議が新たな世界大戦を惹起する一因となるとは、歴史の皮肉です。
 現在世界は満載排水量を基準値とする国が多いですが、海上自衛隊は相変わらず基準排水量を使っています。それも、昭和53年以降は日本独自の計算法に拠っているようです。こんなところにも「ガラパゴス化」が…

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