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映画『ビハインド・ザ・コーブ』(Behind "THE COVE")を観てきた。

 新宿のケイズシネマK'sCINEMA)で、『ビハインド・ザ・コーブ~捕鯨問題の謎に迫る~』(監督:八木景子)を観てきた。この映画は、平成21年に公開された『THE COVE』(ザ・コーブ。コーブとは、入江のこと)というドキュメンタリー映画(ということになっている)の反証ドキュメンタリーとなっている。ナレーションは英語で、日本人出演者のセリフもすべて英語字幕付きで、海外発信を意識したつくりである。
 詳しい内容は、ネタバレになるので割愛するが、かなりの力作である。「ザ・コーブ」の公開以来、動物保護団体や環境保護団体と称する外国人が多数押しかけて、迷惑してる太地町(和歌山県)の様子や、地元の人が語る複雑な心情。悪名高いシーシェパードの環境テロリストぶりと、単純にテロと断じることのできない奇怪な背景事情。環境保護がビッグビジネスとなっている呆れた現状など、大変興味深かった。「ザ・コーブ」の監督のルイ=シホヨス氏や、主演のリック=オバリー氏へのインタビューもある。よくここまでいろんな人にインタビューできたなと、監督のタフネスぶりに感心させられる。シヨホス監督とオバリー氏が、互いに責任を擦り付け合うような発言をしているのに注目。(余談だが、オバリー氏が、『わんぱくフリッパー』でフリッパー役のイルカの調教師だった事実を知って、些かショックだった。あのドラマで米国の沿岸警備隊というものを初めて知った。大好きなドラマだったのだが…)
 面白かったのは、マッコウクジラのマッコウ頭油(マッコウクジラの頭部にある鯨油。海底深く潜るマッコウクジラは、これで浮力調整を行って、急速潜行や浮上を行う。熱と圧力の変化に強い)を、米国が「高級アルコール」という名目て、日本から輸入していた事実。マッコウ頭油は、その熱と圧力変化に強い特性から、人工衛星や大陸間弾道弾(ICBM)のサーボモーターなどの潤滑油として重宝されていたのだが、「鯨類保護」を訴える傍らで、宇宙開発や核ミサイルのためにマッコウクジラの鯨油を日本から買っていた米国のご都合主義には、呆れを通り越して怒りを覚える。
 監督の八木景子さんは、「子供のころ好きだった給食のクジラの竜田揚げが、なぜ食べられなくなったのか?」という疑問から始まって、これだけのドキュメンタリー映画を作ってしまった。(喰いものの恨みは恐ろしい!。)監督が探った問題の根は、ベトナム戦争にまで行きつく。当時ベトナム戦争で行われた枯葉剤作戦などの蛮行が、環境問題として世界から非難されるのを避けるために、ニクソン大統領(当時)が、殊更捕鯨を問題視して、世間の目をごまかそうとしたというのである。日本が特にターゲットとされたのには、真珠湾攻撃の恨みという側面もあるかもしれないという。こうまで根が深いとは!
 それにしても、持続可能な捕鯨を行ってきた我が国が、乱獲で鯨類を滅ぼしそうになった国々が集まるIWCで責められるのは、承服しがたい話である。日本と反捕鯨派の国々や団体の価値観がこれほど違うとなると、話し合いだけで妥協点が得られるとは思い難い。どうしたものか、考えさせられる映画である。捕鯨問題に関心がある人だけでなく、広く世界中の人に見てもらいたい映画である。

 映画終了後、八木景子監督の挨拶があった。監督の挨拶を見るなんて、『時をかける少女』をテアトル新宿に観に行って、細田守監督の挨拶を見て以来だ。
 監督から、映画撮影に関する話をあれこれ聞くことができたが、劇場や映画の公式サイトがサイバー攻撃を受け、アノニマスらしい犯行声明があったという話には驚いた。前日、劇場にアクセスしたらエラーになって接続できなかったのは、丁度サイバー攻撃を受けてる最中だったらしい。恐ろしい話だ。

映画公式サイトhttp://behindthecove.com/

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