« 「茹でガエル」になる前に、読んで欲しい1冊。 | トップページ | 夏に至ると書いて「夏至」 »

なぜ、悲劇を政治に利用するのか?

 沖縄県うるま市で発生した女性暴行殺人事件に関して、被害女性を追悼する「県民大会」が那覇市で開かれた。式では「海兵隊の撤退」や「日米地位協定の抜本的改定」を求める決議が採択されたという。
 事件はあまりにも酷いものでした。被害者の恐怖や無念、遺族や友人知人の悲しみは想像を絶します。若い女性の未来を奪い、周囲の人々を悲しみのどん底に突き落とした事件に対し、私も激しい怒りを覚えます!
 しかし、悲劇を追悼するのは当然として、なぜそこで「海兵隊撤退」や「日米地位協定改定」の決議が出てくるのでしょうか?
 容疑者とされる男性は確かに海兵隊員でしたが、既に退役(最終階級は3等軍曹との報道アリ)しており、再就職先は空軍基地である嘉手納基地内でコンピューターや電気配線などを扱う会社。報道では「軍属」と表記されていますが、日米地位協定の定義する「軍属」(civilian compornent)とは「合衆国の国籍を有する文民(civilian persons)で、日本国にある合衆国軍隊に雇用された」者のことです(日米地位協定第1条(b))。「永久服役」の士官とは違い、既に退役した「民間人」で、就業先は空軍基地。事件は基地の外で就業時間外に発生。すなわち、「公務執行中の作為又は不作為から生じる罪」(同条約17条(a)(ii))であり、裁判権を行使する第一の権利は日本側にある事案です。それなのになぜ「海兵隊撤退」なのでしょう?なぜ、既に退役した元海兵隊員の犯罪行為によって、海兵隊全員が連帯責任を強制されねばならないのでしょうか?また、裁判権は日本にある事案なのに、ここで「地位協定改定」を要求する必要があるのでしょうか?
 例えとして適当かどうかわかりませんが、元韓流アイドルに女性暴行の疑惑が報道されたからと言って、「すべての韓流アイドル(女性グループを含む)は日本のショウビズ界から全面撤退しろ!」と主張するのは妥当でしょうか?あるいは、警察官の不祥事が続発したからと言って「警察を廃止しろ!」と主張のは妥当でしょうか?疑惑を持たれた元韓流アイドルや不祥事を起こした警官個人が非難されるのは仕方ないでしょうし、現役警官であれば監督責任も問われるでしょう。しかし、個人の不行跡で他の人にまで連帯責任を強制したり、既に辞めた人の責任まで背負わせるのは不当です。
 憎むべき性犯罪を減らすには、警察によるパトロールの強化や街灯・防犯カメラの設置、地域全体の防犯意識の向上など地道な努力を重ねるしかありません。犠牲者を悼む祈りのつどいを、政治に利用するべきではないと思います。

日米地位協定」(日英対照)http://www.mofa.go.jp/mofaj/area/usa/sfa/pdfs/fulltext.pdf

|

« 「茹でガエル」になる前に、読んで欲しい1冊。 | トップページ | 夏に至ると書いて「夏至」 »

経済・政治・国際」カテゴリの記事